強誘電体AlScNの薄膜を使うメモリーセルが、室温から1000℃までの試験で記憶状態を保持した。高温でも記憶保持の特性はほぼ変わらず、状態の切り替えに必要な電圧は温度上昇とともに下がった。
高温がメモリーの障壁になる
DEVCOM陸軍研究所は、一般に使われるメモリーチップの大半が極端な高温に耐えられず、故障や重大なデータ損失が起きるとしている。記憶状態を保てなければ、高温環境で電子制御を行う際にメモリーが制約となる。
航空機向けの高温デジタルエンジン制御装置でも、耐熱メモリーは実現に向けた課題だという。この課題に対し、研究対象となったのが強誘電体の薄膜を使う記憶セルである。
AlScN薄膜で記憶状態を作る
DEVCOM陸軍研究所は、NASAグレン研究センター、GE Aerospace、アーカンソー大学、コロラド鉱山大学の協力を得て、窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)の薄膜を使うメモリーセルを製作した。このセルは、AlScNの電荷状態を記憶に利用する。
AlScNは強誘電体で、内部の電荷状態を切り替えた後、電源がなくてもその状態を保つ。切り替えた状態が高温でどこまで維持されるかが、セルの試験対象となった。
1000℃まで記憶保持を試験
製作したセルは、室温から1000℃までの温度で試験された。評価の対象は、この温度範囲で記憶状態を保てるかどうかだった。
DEVCOM陸軍研究所によると、セルは極端な高温でも記憶状態を維持し、記憶保持の特性はほぼ変化しなかった。高温での保持という課題に対し、試作セルで得られた結果である。
温度上昇で切り替え電圧が低下
記憶状態を保持できた温度範囲では、状態の切り替えに必要な電圧も調べられた。試験では温度が上がるにつれて、その電圧が下がった。
材料開発に向けて、DEVCOM陸軍研究所のクリーンルームには強誘電性窒化物用の新しいスパッタ成膜装置も導入された。高温でのセル試験と並び、AlScN薄膜を扱うための設備が整えられている。