既存施設の交流設備を残したまま、ラック列内で800 VDCへ変換して計算ラックへ送る電力構成が設計された。NVIDIAは、建物の電気系統を変更せず、アクセラレーターまでの変換段数を減らせるとしている。
高密度ラックで累積する変換損失
従来のAI計算施設では、系統から届く交流がアクセラレーターへ達するまでに複数回変換される。NVIDIAは、計算ラックの電力密度が高まると、各変換に伴う小さな非効率が累積し、配電のオーバーヘッドと構成の複雑さも増すとしている。
ボトルネックになるのは、施設が確保した電力の大きさだけではなく、その電力をGPUまで運ぶ経路である。ラックが高密度になるほど、途中の変換段ごとに生じる非効率が配電全体へ及ぼす影響も大きくなる。
800 VDCで変換段数を減らす配電経路
800 VDC配電は、高電圧の直流を使うことで、系統とアクセラレーターの間にある電力変換の段数を減らす。NVIDIAによると、変換経路を簡素化すれば、施設で利用可能な電力のうち計算処理へ届く割合を増やせるという。
この設計変更は、電力を増やすこととは異なり、確保済みの電力を計算ラックまで運ぶ途中の損失と構成要素を減らすものである。800 VDCは、個々のアクセラレーター直前だけでなく、ラック列や施設の配電経路を組み直す基準になる。
既存の交流設備へ追加する電力ラック
電力変換設備のNVIDIA MGX-compatible 800 VDC power rackは、既存施設の交流設備に接続し、ラック列内の計算ラックへ800 VDCを供給するよう設計されている。建物側では交流配電を維持し、計算ラックへ入る手前のラック列内で高電圧直流へ切り替えるハイブリッド構成である。
NVIDIAによると、この電力ラックは建物の電気系統を変更せずに導入できる。提供時期は2026年後半の予定であり、確認されているのは設計と投入計画で、稼働開始ではない。
ラック列から施設規模へ広がる直接変換
より広い範囲へ800 VDCを配るrow power centerは、ラック列全体の電源を集約し、頭上の800 VDCバスウェイを通じて複数のラック列へ給電する。ラック列当たり最大2MWを支える設計で、提供は2027年に見込まれている。
新設施設向けのDC power blockは、中電圧の系統電力を一段で800 VDCへ直接変換する。既存施設向け電力ラックが現在の交流設備と計算ラックの間に入るのに対し、DC power blockは施設規模で変換経路そのものを800 VDC中心に構成する。
共通インターフェースで機器と施設設計を接続
800 VDCアーキテクチャ仕様は、異なるベンダーの電力機器を同じ施設内で連携させるための共通インターフェースを定める。NVIDIA、Google、MicrosoftはOpen Compute Projectを通じてこのアーキテクチャを共同開発し、80社を超える機器メーカーとインフラ企業が仕様に基づく製品を構築している。
システム設計指針のNVIDIA DSXリファレンス設計は、共通仕様に沿う電力機器を、ラックスケール計算や施設インフラと接続する構成を示す。機器間の接続条件と施設全体の設計を対応させることで、既存施設のハイブリッド構成から新設施設の直接変換までを段階別に扱う。